「尊厳」とはなにか?
澤田 純
NTT株式会社 取締役会長
尊厳の対象はどこまで広がるか
社会性の中で生まれる、代替不可能な価値
ネアンデルタール人は死者を花とともに葬るような葬送儀礼を行ったとされる。これは尊厳の概念を持つと言えるのだろうか。
私にとって尊厳とは、単なる「個人の権利」ではなく、自分と相手という関係性、つまり「社会性」から生じる概念だ。具体的に定義すると、尊厳とは「相互依存性から生じる、主体と客体の自己同定に基づく代替性のない価値」となる。
こう考えたとき、尊厳の対象範囲はどこまで広がるのだろうか。「自己」および自己が属する「我々」に対しては、多くの人が尊厳を認めるのは論をまたない。「我々」の外側にいる「ヒト」はどうか。理想論ではすべてのヒトには尊厳があるが、これには非認知主義的な側面があり、例えば世界各地で紛争が続く現実を見れば、どこかで線引きされているのが実態だ。
一方「ペット」は家族の一員と捉えられており、尊厳を認める人が多い。鯨や熊など一部の生物に対して尊厳を感じる人も少なくない。そして今後、ロボットやAIのようなモノとの間でも相互依存が生じ、尊厳を認める時代がやってくるかもしれない。
このように尊厳の対象範囲は、時代とともに変化する。私がX Dignityセンターに期待するのは、このように「尊厳」をどのように定義するかといった議論を通じて、現代を読み解くことだ。
※一部画像はイメージです(生成AIを利用して制作しています)