NEWS

レポート

【開催報告】「インターネットを健全な空間にするために」(2025年10月27日開催)

2025年10月27日に「インターネットを健全な空間にするために」が慶應義塾大学三田キャンパスで開催されました。本シンポジウムは、オリジネーター・プロファイル技術研究組合と慶應義塾大学XDignityセンターの共催により、偽・誤情報の社会的影響を多角的に検討するとともに、その対策技術「オリジネーター・プロファイル(OP)」に期待される役割や可能性について議論することを目的として企画されました。

当日の模様(動画)はこちらから視聴いただけます。
https://youtu.be/9Zw12HtLnxM

 

  • オープニング

冒頭、慶應義塾大学政策・メディア研究科特任准教授、OP 組合事務局長およびX Dignity センター副代表のクロサカタツヤ先生が、インターネットが社会基盤になりつつある中で、インターネットの諸課題に対する技術的な取組や、その使い方、社会での位置付けについて議論することの重要性を述べました。

  • プログラム①

パネルディスカッションでは、慶應義塾⼤学⼤学院法務研究科の⼭本⿓彦先生(X Dignityセンター共同代表)、東京大学大学院情報学環准教授の澁谷遊野先生、慶應義塾大学名誉教授および国士舘大学法学部特任教授の鈴木秀美先生、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所准教授の水谷瑛嗣郎先生が議論を交わしました。

冒頭、山本先生からは、「情報的健康」の概念をご紹介いただき、澁谷先生からは、データに基づいた情報流通の偏りや歪みについてご指摘いただきました。また鈴木先生からは、EU諸外国における情報流通に関する法規制やジャーナリズム機能の重要性についてのご意見、水谷先生からはアテンションエコノミーにおける “買い手危険負担(※真偽確認の負担を情報の受け手が負わされることの困難さ)”の指摘や、基盤的・客観的なトラスト指標とそのガバナンスモデルの整備の必要性に関する示唆をいただきました。

議論を通して、信頼性を判断するための情報の不足という課題や、法制度の限界が指摘されました。また、民間・学術・市民など多様な主体が協働するマルチステークホルダーによる情報エコシステムの構築が不可欠であるとの認識が共有され、多様なアクターがコミュニケーションを深め、統合的にデジタル空間の健全化に向けて取り組むことの重要性が確認されました。

(プログラム①の様子)

  • プログラム②

慶應義塾大学特別特区特任教授・OP組合理事長の村井純先生からは、インターネットの持続的発展には①オープン標準、②自律分散システム、③グローバルガバナンスが重要であり、歴史を踏まえて社会と技術が協働して課題を克服すべきだと指摘がありました。また、グローバル標準を「誰のものにもなる」形で維持するためには、組織化と運用が不可欠であり、その中でOPの位置付けを高める必要性が示されました。さらに、悪用への対応における社会と技術の連携の重要性の指摘や、多様な発信者が並ぶ現代のメディア環境において、信頼できるメディアのあり方を再考し、日本が「デジタルの善用」を主導する意義も強調されました。

(プログラム②の様子)

  • プログラム③

慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授でOP組合技術開発部会長の鈴木茂哉先生からは、OPが目指す「情報の真正性・信頼性の検証」について、技術的な観点からご説明いただきました。発信者情報の提供と第三者認証、コンテンツの改ざん検知を可能にする仕組みに加え、特定技術に依存しない長期的な運用設計についてご紹介いただきました。また、信頼のよりどころとなる発信者の情報発信ポリシーなどを、デジタル署名により改ざん不可能な状態で確認したうえで、コンテンツを閲覧できる点も説明されました。OPはウェブサイトそのものやページ内のコンテンツ、デジタル広告を対象としており、長期運用を見据えた検討が進められていることが報告されました。

 

  • プログラム④

総務省大臣官房総括審議官(情報通信担当)、藤田清太郎氏からは、総務省における情報空間への対応についてご説明いただきました。情報流通プラットフォーム対処法などの法制度や新たな制度検討、さらに「デジタルポジティブアクション」によるリテラシー向上や対策技術の開発を柱として取組を進めていることが紹介されました。また、デジタル広告、青少年、災害対応など個別課題に対する具体的施策も示されました。総合的なリテラシー強化の重要性が改めて確認され、今後の取組のさらなる拡充が必要だと強調されました。

(プログラム④の様子)

  • プログラム⑤

クロサカ先生からは、OPの類似技術に当たる「来歴管理技術」との比較を踏まえ、OPの意義についてご説明いただきました。来歴管理は情報発信者がコンテンツの作成から編集の過程を検証する仕組みであるのに対し、OPはエンドユーザーによる検証を可能にするものであり、両者を組み合わせることでより効果的な対策となり得ると指摘されました。また、その他のインターネット情報の信頼性を扱う多様な取り組みを紹介し、エンドユーザーが意識せずとも情報を検証できる環境を整えることこそ、インターネットの信頼性向上につながると強調しました。最後に、国内の複数のメディアで取り組みを進めており、今年度中にもOP技術の社会実装が始まることが報告されました。

(プログラム⑤の様子)