PROJECTS

概念と歴史

贈与経済2.0:社会実装を基礎にした未来社会のデザイン

「概念と歴史」ユニットでは、人文学の知見を社会実装することを目的として「贈与経済2.0:社会実装を基礎にした未来社会のデザイン」というサブユニット(プロジェクト)を推進する。具体的には、人間の自由や倫理、贈与の意味をめぐる哲学的探究、制度設計や合意形成メカニズムの構築といった複数分野の成果を組み合わせることで、人文学の根本問題を実践的に社会に接続しようとする。こうした構想は、X Dignityセンターが掲げる「包摂的均衡と発展」「思考様式の革新」といった理念とも響き合うものと考える。現代資本主義が抱える課題(孤立、環境破壊、不平等の拡大等)に対し、貨幣を介さない価値交換の仕組みとしての贈与経済に注目し、ブロックチェーン技術を活用してその透明性・信頼性を高めることで、社会的信用が循環する新たなエコシステムの構築を目指す。

本プロジェクトでは、人文学と経済学の専門家による学際的な共同研究体制がすでに構築されている。哲学の立場からは、現象学・倫理学を専門とする斎藤慶典氏(慶應義塾大学名誉教授)が参加し、贈与経済の理論的基盤の検討を行っている。経済学の領域では、ゲーム理論とインセンティブ設計の専門家である石川竜一郎氏(早稲田大学教授)および郡山幸雄氏(仏エコール・ポリテクニーク教授)と共に、制度設計や社会的合意形成に関する研究が進められている。

本プロジェクトの成果は、すでに一般書や国内外の学会・講演会等で発表されており、その一覧がウェブサイト上で公開されている(40件)

Heartland Projcet:贈与経済2.0>メディア掲載・イベント出演

そのうちのいくつかをピックアップすれば、

 

2.インセンティブ設計や制度設計の観点から、贈与が持続的に循環する仕組みをデザインする経済学と共同研究を展開するもの

“Tokenomics of Gift Economy 2.0: Redefining Trust in Modern Economies”, Keynote Speach: Workshop on the Economics of Technology and Decentralization (Pre-Conference Workshop) 2024/12/03

 

などが挙げられる。

また、2025年4月には贈与を記録するウェブアプリ「ハートランド」のプロトタイプを公開し、リリースから2週間で既に500名を超えるユーザーが参加している。今後、このプラットフォームを基盤として、実際に贈与行為が社会的信用を形成し得るかを検証し、社会実装の可能性を測る実証研究を行う。

MEMBER

慶應義塾大学文学部教授
哲学、倫理学
荒谷 大輔
データベース